遂には刃牙と勇次郎の最終決戦という触れ込みで始まった『範馬刃牙』。
1巻と2巻は同時発売で、1巻が刃牙の顔、2巻が勇次郎の顔で、向い合わせるとにらんでいるようになるという決意表明ぶり。
週刊チャンピオンでも
「史上最強の親子喧嘩!」
「倒すことが最高の親孝行!」
と煽りまくります。
1巻は「時は満ちた」という一行から始まり、もはやカウントダウンという感じ。
巨大な象を倒す勇次郎から始まり、もはや地上に敵がいないという描写から始まります。
そして、その情景を語る父親に、子供が無邪気に聞きます。
子供「ねえパパ、誰なら勝てるの?」
親「勝てぬさ、誰も」
子供「その人がもう一人いても?」
子供「その人の子供が大きくなっても?」
この世に敵のいない勇次郎を倒すのは、『バキ』で第二の勇次郎までに成長した刃牙だけ…という素晴らしい煽りから始まります。
そして、刃牙も勇次郎以外にこの世に敵がいないので、スパーリング相手は、空想のカマキリや、唯一取りこぼしていたオリバだけ、という展開。
ここまでは納得。最終決戦までの序章です。
そしてオリバを倒し、倒した勢いで刑務所の壁もぶち破り、文字通り目の前に誰もいなくなった刃牙。
もう最終決戦のはずですが…。
ここで板垣先生が、致命的なものに目をつけてしまいます。
…NHKスペシャルででもやっていたのでしょうか…。
なぜか、
恐竜と戦っていたという人類、ピクル編が始まってしまいます。
しかし、こんな注意書きで始まり、最初は納得していました。
「どうしても描きたいものを見つけちまった! すまん、七週だけ我慢してくれ!」
今まで幾多の名勝負、様々な感動を与えてくれた板垣先生に、そこまで言われたら仕方ありません。
七週くらい我慢してピクル編につきあいましたが…
それが間違いでした。
約束通り七週目でピクル編が終わったと思ったら…
なんと、七週目でストライダム少佐が現れました。
刃牙世界とリンクしてしまったのです。
そこからは地獄の始まりでした。
勇次郎、刃牙、ジャックに続き、実質ナンバー4の烈の右足が食われ(強さランキングについては2ちゃんのスレ等参照。この並びはあくまで俺の意見です。)
克巳が感動的に新・真マッハ突きを何週もかけて覚えたと思ったら、ピクルは寝てるだけだったという「少年ジャンプ」なら許されないような努力の否定あり、
ブランド価値を保っていたジャックが吊るされ、花山が解説役になって「な、る、ほ、どー」とか言う、過去キャラの壊し祭り。
それに何より、前フリとオチが合ってなくてカタルシスがないし、とにかく全てがダラダラ長いという謎のマンガになってしまいました。
これも、
「予想を裏切り期待を裏切らない」
という悪しきポリシーのせいだと思います。
このネット時代、すべての人の予想を裏切るなんて無理です。
無理というか、しようとすると『範馬刃牙』になります。
そして、地獄のようなピクル編が終わったと思ったら、さらなる地獄が待っていました。
「烈海王ボクシング編」。
…親子喧嘩は何処へ…。
自分は、あまり「つまらない」と言いたくないし、今まで楽しませてもらったことへの感謝もあるので、アマゾンなり2ちゃんなりにアンチのコメントがあると、反論したいのですが、あまりにもアンチのほうが正論すぎて、何も言えない状況です。
…しかし思うに、
これが今回語ってみようと思った動機なのですが、
これだけ色々文句言われつつ、みんな読んでいるマンガって珍しいんじゃないでしょうか?
「最近つまらないね。もう読んでないよ」
これはいっぱいあります。
でも刃牙の場合、
「最近ひどいね。なんなの範馬脳って」
「梢ちゃんはどこ行ったの?」
「もう一回トーナメントやるのかな」
…なんだかんだ、みんな読んでるのです。
そして、チャンピオンでも前のほうに常にあります。
これはなんなんでしょうか?
思うに、刃牙ファンは、
全員どMなんだと思います。
騙されてるとわかりつつ、ホストに貢ぐキャバクラ嬢の心境。
板垣先生の虜なのです。
しかし本当に、今、本気で『範馬刃牙』を心から楽しんで読んで、アンケートに○をつけ、コミックスを買っている人たちは、どういうロジックで読んでいるのでしょうか?
ぜひ教えていただきたい。
まあ、こんなこと書きながらも、明日またチャンピオンを楽しく読むんですけどね。
柴千春に刃牙ボコボコにしてほしいっつーの、ジャンジャン!
完