元売れない芸人の独り言

元売れない芸人がキン肉マンについて語っています。キン肉マンアニメ化祈願。

玉の向こう側は見えたのか〜セクシーJ第二回単独ライブ感想〜

4月8日、ピン芸人セクシーJの単独ライブに行ってきました。セクシーJはマキタスポーツさんのお弟子さんであり、私とはフライデーナイトライブチャレンジコーナーで凌ぎを削ったいわば同期の桜であります。

セクシーJは、パンストにボールを入れ「金玉」と見立てる芸をします(してきました)。

セクシーJは、金玉芸人であり、面白い芸人です。

セクシーJは、金玉芸人であり、まだメジャーシーンには出ていない芸人です。

金玉だから面白かったのか、別の要因があるのか

金玉だからメジャーシーンに出ていないのか、別の要因があるのか

それが証明されるライブだから「玉納め」というタイトルなのかと、期待していました。


そしてこの単独ライブにはもう一つの意味がありました。

それは、前回の単独ライブのリベンジです。ロフトプラスワンで単独を行ったJですが、マキタさんと鹿島さんに手痛くライブ内ガチダメ出しをされてしまいます。

このライブについては、中山涙さんの「最低であるがゆえに最高になり得るという奇跡」という記事に詳しく、最低だったか、最高だったか、最低で最高だったか、見る方にもよるのかもしれませんが、確かにダメ出しされる要因はあったと思います。ちなみに私はDVDで見せてもらい、ここ数年無いほど笑い転げましたが、それはあくまでも私の主観であり、俯瞰で見ればまあ確かに色々あるかもなと思いました。

そして師匠のマキタさんに「以後単独禁止」とまで言われたJが、禁を破り、進退を賭けての決戦となったのです。


会場の新宿バイタスに着くと、満員。ぶっちゃけてしまうとそれだけで勝ちと言えます。少なくともアントニオ猪木ならそう判断するでしょう。進退を賭けた金玉芸人を見に、好事家たちが吉本百周年パブリックビューを見ないで集まったのです。大勝利としか言いようがありません。…ただ、それはあまりにも大人の感覚なので、あくまでも内容がどうだったかを考えたいと思います。


客入れのときに、普通芸人は音楽をかけるのですが、なんと彼は、前回の単独ライブの映像、しかも怒られているシーンの映像をスクリーンで見せていました。何気なくやっているようで、これはなかなか大変なことをやっているぞと思いました。

まずは、今回の単独ライブのストーリーを見せるという意味合いがあります。次に、ダメ出しされている姿を見せて、ハードルを下げるという意味合いがあると思います。ただ、もう一点。これはどう考えて映像を流していたかわかりませんが…売れてない芸人は、ハードル下げ過ぎ注意だと私は思っています。あまりにも「この人はつまらない」と言われた状態でネタを見ると「つまらない人で笑ったら、私までつまらないと思われる」という恐ろしい心理を呼び覚ましてしまうのです。そうなったら、それを逆転するのは至難です。Jがそこまでも考えた上で、「笑ったら恥ずかしいと思わば思え。それでも笑わしてやる」という決意で映像を流していたのなら、漢(おとこ)としか言いようがありません。


【漫談】

金玉をぶら下げて出てくるのではなく、和服で素しゃべりで出てきました。客入れのフリを使った「第一回単独ライブで大失敗しました」でツカミ。そしてここから、珍しいと言えば珍しいJ漫談になっていったのですが…早くもJ節が出始めました。「私生まれも育ちも葛飾亀有で、最近こち亀で有名になったんですけど…」ここで笑いが起こる。Jとしては、漫談の出だしにすぎず、笑いは想定していなかっただろう。だが起こった。なぜなら、こち亀1976年から連載しているからです。その後もそういった類の笑いが起こり続けました。よく、スベったピン芸人が「笑いどころは自分で見つけてくださいね」というが、Jはそんな常套句を使わなくても、笑いどころを自分で探すお客さんを育てていたのだ。ツッコミどころを客が探して笑う…ある意味松本人志監督作品クラスの芸なのかもしれません。

…ところが、Jが天然で破綻した部分を探して笑う、というスタイル(?)には、やはり弊害も出てきました。Jがスベり笑いだとは思わないのですが、スベり芸の人が陥る罠…お客さんが、ちゃんとしたところで笑わなくなってしまうのですこち亀や、「大阪から日本に…あ、東京に帰ってきて…」という奇跡で笑ってしまったお客さんは、「昔私は学習院大学で高貴な方々を見ていました。(中略)今は、SMクラブの営業に行っています。どちらも女王様です」という、一番オチらしいところで笑わなくなってしまうのです。そこは絶対Jも決めるつもりで右ストレート打ったんだろうな、とわかりました。なぜなら、笑い待ちの顔をしてちょっと待機していたからです。ところがその待ち時間は沈黙で終わり、その顔が「(あれ? おかしいな…)」という顔に変わったとき笑いが起こるのです。ちなみに「あれ? おかしいな」とは彼は言いません。それだとスベり芸になってしまうからです。あくまでも、本気で笑いを取りにいっているから、奇跡の顔が生まれるのです。

一試合目から、いい感じの不穏試合で始まりました。一体どうなるのか…。


【金玉洗い1】

二ネタ目、ふんどしに金玉というおなじみのスタイルで彼は出てきました。金玉無しもありうると思っていたので、もうここで金玉くるのか、とちょっと意外に思いました。内容は江戸のセクシーJ。J好きにはおなじみのネタです。ただ、おなじみすぎるのか、「破綻したときに笑う」モードになってしまっていたのか、お千代の芝居のところは、全然ウケていませんでした。


【金玉洗い2】

大和時代のセクシーJ。前半は、金玉ネタベストになることがわかる。


【金玉洗い3】

飛鳥時代のセクシーJ。お千代がモグタンという生き物とタイムスリップしてセクシーJを見に行くという、昔教育テレビでやっていたような設定が面白かったし、聖徳太子が散々金玉イジった後に「冠位十二階と名付けよう」というオチが面白かったし、ウケていた。ここで、本当に笑ってほしいところと、笑うところが合ったかと思ったが…


【ブリッジ〜歴史上のセクシーJ〜】

スクリーンに、絵が映し出される。例えば、合戦をやっている絵の中に、一人セクシーJが混じっている。Jの絵のうまさをPRする場だとすればよかったが、労力と笑いの費用対効果のバランスが悪いと思いました(笑)


【ゴールデンボール劇場〜結婚披露宴〜】

「金玉袋」というオチが思い出せないというネタ。フライデーのときやっていたが、ちょっとリミックスされていました。


【ゴールデンボール劇場〜選挙演説〜】

フライデーナイトライブでやったネタのリミックス。金玉をマイクに見立てるのとか、「自由民主党から立候補した〜」とかはもはや鉄板。


【ゴールデンボール劇場〜ようこそ夢と魔法の国へ〜】

ゴールデンボール劇場待望の三作目。なんだ、ゴールデンボール劇場って。某巨大テーマパークの有名な音楽に乗せて「二つある片方をお隣へおすそ分け」と歌ったのが面白かった。


【ブリッジ〜セクシーJ誕生〜】

噂には聞いていたが、タツオさんと鹿島さん司会で、ピエール瀧さんにその場で「人類最古の古典芸」というキャッチフレーズをつけてもらうなど、贅沢な誕生でした。今よりも荒々しい雰囲気だけど男前で、初期こち亀を見た気分になりました。


【中MC】

和服で素しゃべりで登場。ここから金玉なしということを知らされる。なるほど、金玉芸の前半と、金玉なしの後半に分けたのかと納得。ここからが今回の見せ場ということだろう。期待が高まる。


【不器用マン】

緑の全身タイツで、木の丸太を持って登場。金玉はなくても、それに変わる登場のインパクトはあった。本当の丸太を実際に舞台で時間内に切ろうとするが、不器用だから中々切れないというネタ。難しいのが、実際Jは不器用なんですが、ただ、ネタとしてやってしまうとわざとらしい部分も見えないこともないというか…ただ、ウケてましたし、そのややこしさの中に金玉の向こう側が見えた気がしました。


【不器用マン2】

部屋の荷物が片づけられない人。後ろからだと散らばった荷物が見えず、本当に不器用になっていた


【落語】

まさかの落語。まず、話が思ったより流暢だった。失敗を望まれているのものの、こういうとこでちょっと芸を見せると、引き締まっていいと思った。そしてオッパイを舐める顔でがっつり爆笑を取っていた。…ただ、最後の「オッペ―(オッパイ)怖いという話でした」は蛇足だったかなと。あの会場のお客さんは、開始2分で皆それはわかったはず。わかった上で、十分に面白かったので。


【スピードスケート】

携帯電話で話をする男。「あれ買っておいてよ。あとさ…ちょっと待って、今からスタートだから」と、話しながら、スピードスケートを始める。…いい。私が芸人だったらやりたいくらいの設定です。R−1いけんじゃないかと思うくらいの入り方だった。…だが、惜しむらくは、後半1分がちょっとガクっと下がった。ゴールするところで何かオチをつけて終わりでよかったのでは。


【道案内】

外国人に道案内をする。のだが…かなりの厳しい試合だった。しかも、失敗を笑う感じでもなく…ちょっと本格的演技派コントみたいなのに無理して飛び込んでしまった感があった。


そして最後にアンコール的に金玉四十八手を行ったのだが…Jの涙目にも影響されてか、客席から「よっ!」「金玉屋!」という声援が飛んでいた。暖かく、愛があり、女子プロレスの会場かと思った


…最後の金玉四十八手、それへの合いの手は、かつてない、オンリーワンの空間で、TLでも絶賛が多かった。そしてこの記事も、絶賛で終われば綺麗なのはわかっています。ただこういうツイートも。

(ツイートの貼り付け方がわからなかったので、とりあえず強引に貼りました)

そうなんです。愛のある素晴らしいライブだったのですが…ちょっと愛され過ぎてるのかという感もありました。別にこれ以上厳しい環境に叩き込まれる必要はなく、愛される人を増やしていって売れればいいと思うのですが、そのためには今回の素晴らしいライブを、そっと胸に仕舞いこむ必要もあるのかなとも思いました。

そしてこれからJにやってほしいのは、

金玉Onlyのライブと、No 金玉Onlyのライブを別々にやってもらうことです。

金玉と非金玉を比べれば、そりゃ金玉が勝ちます。下ネタとして強いから、とかじゃなく、Jと金玉の親和性が高すぎるのです。

No 金玉Onlyのライブが成功したとき、本当の「玉納め」になるのではないでしょうか。


▼そう言いながら、2分9秒からの、スリーピースバンドと金玉芸のコラボがかっこいいPV▼
追え!御江戸町娘/極悪いちご団