「『今度の夏休みに一本描くよ…』と言って、
本当に描いた人を一人も見た事がない。
『来月あたりから描こうと思ってるんだ…』と言って、
本当に描いた人を一人も見た事がない。
『今から描く!』そういえる人しか漫画は描けない…。」
成功した人の自叙伝は数あれど、なんと、成功していない人の自叙伝が刊行されました。
最近のマガジン・マガジンの書籍は攻撃的です。(勉強不足で、昔から攻撃的なのかもしれませんm(--)m)
52歳にして、いまだ漫画家アシスタント。いまだ成らずの「歩」の人の自叙伝。
それでも…いや、それだからこそ、漫画家志望、芸人志望、ミュージシャン志望、小説家志望…必読の書かと思われる。
特に銀座ポップに。(※友達の37歳の若手芸人です)
成功者の自伝を読んでいると、壮絶な貧乏体験が描写されます。
それでも、結局成功しているので、最後それは「あのときはつらかったよ! ジャンジャン!」で終わるのです。
しかし…そんな成功を収めて…本を出すほどの成功を収めるなんて、1%で、残り99%はその「つらかった」状況のままで生きるのです。それを考えると夢見る若者(私含む)は不安になるのですが…
「『アシスタント生活に30年という貴重な人生を浪費した…』と、嘆く事もできますが、絵が好きだという点からすれば、『30年間も好きなことだけやってこられた!』と笑うこともできます」(文中より)
そうなのです。
成るも何も、ある意味この人は、もう夢をかなえているのです。
この本は、結局成功しなかった人(まだわかりませんがm(--)m)にスポットライトを当てた、稀有な本で、夢見る若者の救いの書となる可能性を秘めています。もっとうまいこと言えそうだな…。水道橋博士とかに書評してほしい。
…ただ。
…ただ、せっかくならば成功したいもの。
ここからは視点を変えてこの本を読んでみます。
つまりこの本は
「こういう思考・行動をしていると成功できないよ」
という反面教師にもなる本なのです。
…もちろん、作者・編集者さんは、そのような読み方をされるのも想定内であると思っており、決して本の内容に文句を言ったり、意見を言うわけではございませんm(--)m。
たとえば、ハアさんという先輩アシスタントが、一足早くデビューし、二作目を持って出版社を回るときの描写。
「ハアさんは新作を持って出版社をまわります。その新作を私も読ませてもらいましたが…んーイマイチか。」(文中より)
…そんな偉そうに見てないで、「なぜ一作目が出版社に刺さって二作目はダメなのか」「どこが違うのか」「自分ならどうするか」を考えるべきだと思いませんか?
それに比べて、矢沢永吉さんの『成り上がり』。高校生のころにロックに目覚め、
「東映でフィルム運びやってたとき。一回運ぶと三十分ぐらい休憩がある。その間、発生練習してた、屋上で。
『アー、アー』怒鳴られたよ、映画観てる人に。
次は声楽の本も買って、単独で勉強した。
『オレはプロになる』そう決めてたもの。
全部、夢。やれると信じてたもんな。とんでもないスターになってやる。
だからフィルム運び、重くない。」
『成り上がり』/矢沢永吉(角川文庫)
…まあ、エーちゃんと比べるのも違うんですが、何が違うのかを考えるのも夢見る若者は大事かなと。若者というか、私ね。
とにかく、この方に注目した視点はすごいと思います。怒られなかったら、また書きます。
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