「ちょっと! なんで手つないでくれないの?」
「バカヤロー。恥ずかしくて手なんてつなげるかよ」
「意地悪…! こんなに混んでるんだよ!
はぐれたらどうするの!?」
「知らないよ」
「じゃあもういい! 私、他の人と花火見る」
「勝手にしろよ」
「ごめん…嘘だよ」
「こっちこそごめん…小生のほうこそ悪かったでござるよ」
「何、小生って(笑)コーイチローって本当に面白いね」
「涼子こそ本当に可愛いよ」
「だけど、そろそろ花火始まっちゃうよ。
こっから花火見えるのかなあ」
「バカ…俺にまかせとけよ」
「もう! 涼子はバカじゃないよ!」
「こっち来いよ」
「何これ…マンション?」
「いいから」
そういうと、俺たちは屋上に上がった。
「こんなこと勝手にして…あっ…」
その瞬間、花火が上がった。赤、ピンク、青、オレンジ…数々の光が眩く輝き、夜空を照らした。
「どう? 特等席だよ」
「嘘…私のために…こんな…」
「涼子…俺は、お前のことが好…」
二発目の花火が上がり、俺の言葉はかき消された。
しかしもう、俺たちに言葉は必要なかった。
舞い上がる火の花の中で、何度も口づけしあった。
「そろそろ…行かなくちゃ」
「なんで? 明日早いの?」
「うん。クレアラシルと、ドコモのポケベルのCMの撮影なんだよね」
「売れたら俺のことなんか捨てちゃうんだろ?」
冗談で言ったのだが…
急に彼女は真顔になり、その目からは涙が溢れてきた。
「どうして…そんなこと…言うの…?
私は、ずっとコーイチローと一緒だよ…」
俺は何も言わずに抱きしめた。
俺も広末涼子もまだ15歳の夏のことだった。
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