読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

元売れない芸人の独り言

孤高のコーイチローという芸名で売れない芸人をやっていました。

スベるとは何なのか

先日、フラットファイブのライブ、フフフのフー昼フフというライブを見させていただいた。

ホロッコさんのジェットコースター夫婦漫才や、米粒写経さんの爆裂的にウケてる歴史漫才、可愛いと言われている女コンビ・裏庭コミックスなど見所はたくさんあったが(詳しくは今週発行のストリートお笑いニュースで! 月額315円。一通換算で78.75円!!)一番印象に残ったのは…中川健太郎君だった

知らない方のほうが多いだろう。私も見るの二回目…かな。フラットファイブか人力舎を目指す若手の芸人さん…だと思う。間違ってたらごめんなさい。

なぜ印象に残ってたかというと…かなりスベっていたからだ。

…いや、こんなことをブログに書くべきかすごく悩んで、書いては消し、書いては消した。だけど、二点の理由で書こうと思った。

一点は、彼がティラノサウルスというコンビでウケを取っているのを見たことがあること。一年中スベっている人をスベっていると名を指して言うことは絶対にしない。ウケも取れる人がたまたまスベっていたから、こうしてブログの材料にできる。

二点は、その後のトークコーナーで、自身で「こんなにスベったの人生で五回くらいです」と自分でネタにしていたこと。そしてトークで自虐ネタできっちりウケを取りかえしていた。だから、遡って、記事にできる、と思った。


なんで記事にしたいと思ったのか。それは彼を糾弾したいからではない。やはり笑いは哲学と同じくらい奥深い学問だからだと思うのである。

学問だとなぜスベったことについて考えるのか。これも二つある。

一つは、ウケてる人のネタを見ていても、実はあんまりわからないからである。…まあ、私だけかもしれないですが…。例えばパンクブーブーさんが何故ウケるのか。設定のわかりやすさ、わかりやすいボケに丁寧なツッコミ、間…などあるが…じゃあ例えば私がパンクさんのような漫才を作ってウケるかといえばかなり難しいだろう。それに、どんなに考えても、本質的なところ、とどのつまりなぜウケたのかは、パンクさんにしかわからないんじゃないかという気がしている。それに比べて、スベった人は、わかりやすい、普遍的な原因があるのではないかと思うのだ。少なくともウケた原因を追究するよりは。

二つめは、この日、中川君以外全組ウケていたこと。もちろん笑い声の大小はある。一位は米粒さんかスパローズさんかブラジルマンさんだった。だけど、中川君と同じ若手コーナーのパープルタウンも天の川も、それなりにウケていたのだ。これがR−1一回戦等だったら、スベって当然の舞台だ。スベった人を見てもそこまで勉強にはならないかもしれない。だけど、ウケて当然の舞台。客はみな、私も含め、隙あれば笑おうと待ち構えていた。…主催者であるホロッコさんの人柄なのかもしれないが、そういう暖かいライブなのだ。本来。そこで…というのはなぜなのか。


彼のやったネタは、「くずをの詩」。「●●したっていいじゃない。ダメ人間だもの。くずを」という、相田みつをのパロディのフリップネタ。フリップには相田みつをのような書体で、その詩が書かれている。

…超次元で考えると、キャプテン渡辺さんとカブっているということがある。やるとしてもキャプテンさんと違う切り口か、上回るボケ力がないと…と思うが、それはR−1とかの話。この日そこまで厳しい目で見ている人はいなかっただろう。もう一つは、フリップネタってどうなんだという問題。でもこれも芸人間の問題で、ライブでウケを取る分に、まだまだフリップは有効な手段だ。

ネタはこんな感じだった。

「遅刻したっていいじゃない ダメ人間だもの くずを」
「将来の夢は、社長やF1レーサーになることじゃなく、ヒモになること くずを」

おそらく…

あまりにも予想を裏切らないと、ウケない

のではないか。

もちろん逆のパターンもある。ひねくりすぎて、なんだかわからなくなってしまうパターン。とくに二分ネタとかではよくある。だが、わかりやすいほうがいいといっても、限度があるのかもしれない。まあ、一つ目、二つ目は、前フリであり、くすぐりであり、そこからすさまじく面白いことを言わなくてもいいかもしれない。(これも、いや、一つめから大きいの狙っていけ、という学説もある)だけど、もう三つ目のボケからは、KOさせる気で狙っていかないと短い分数では間に合わないのではないか。

そして、ネタ終盤に来て、ようやく予想を裏切ることが出てきたのだが…

「バレなければパクったっていいじゃない くずを」

クズあるあるの中でも異種というか…芸人目線での話なのだろうか。とにかく目線をずらすものが出てきた。だが…スベるとは恐ろしいもので、今までスベってた故、何かこれが生生しく聞こえてしまった。本当にパクってるのかな、みたいな。これは、ウケていたら抱かなかった感想に違いない。


かくいう私も、現役時代何度もスベった。現役後半の一年は、全く笑い声のないだだすべりというのは無くなったが、2007年や2010年はなかなか厳しい日もあった。スベるとはなんなのだろうか。ウケる気でやって、お笑いライブに来ているお客さんを前にして、なぜスベるのか。もしかしたら答えは出ないのかもしれない。

だが、一つ答えが出ていることがある。芸人さんは結局、ウケようがスベろうが、記憶に残った人が勝者ということだ。そういう意味で、中川君は私の中でこの日の勝者の一人だった。