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元売れない芸人の独り言

孤高のコーイチローという芸名で売れない芸人をやっていました。

笑撃戦隊は笑撃戦隊の中のダウンタウンを殺せるのか

笑撃戦隊の『ヒーローショー』を観ました。

「お笑いネクストブレイクをいち早くお届けする」というコンセプトの笑魂シリーズの作品。笑魂シリーズは、髭男爵さんや狩野英考さんなど売れている芸人さんの作品も作りつつ、ぼれろさん、オジンオズボーンさん、エレファントジョンさん、ケチン・ダ・コチン等、事務所の枠を超えて、若手芸人の作品を作っている。

そして笑撃戦隊笑撃戦隊ナベプロ所属。ワタナベコメディスクール6期生。ワタナベコメディスクール卒業の芸人には、1期にフォーリンラブ、2期にハライチ、3期にイモトアヤコ、慶、8期にペパーミントの風に吹かれて、などがいる。笑撃戦隊は、ボケが柴田基。1984年生まれ。ツッコミが野村辰二。同じく1984年生まれ。2010年M−1準決勝に進出し、PON!でレポーターをやっている。だが彼らの飛翔のやや手前。私は彼らの強さを肌で味わっている。走馬灯という伝説的なコンビで我々は、ナベプロ若手ライブ「step」の激戦のネタ見せを通過することができた。だが、本戦には、さらなる壁がいた。それが笑撃戦隊だった。別に全国区のスターで、知名度があった、というわけではない。だが、もうそのライブではエース的な、カリスマ的なポジションを確立していたのだ。だがそれは、虚構ではなかった。三十組中1位を、三連覇。五回一位にならないと所属になれないみたいな過酷な状況で、あっさりとリーチをかけていた。しかしここまでカリスマ的になっていて、なぜ売れないのかと思っていた。そしてこのDVDでネタをじっくり見て、ようやく一つの答えが出た。

整形


柴田「この場を利用してお前に言わなきゃいけないことあんだ」
野村「言ってください。言ってください」
柴田「明日。晴れて。整形手術。受けることになったから。またね。もしお目にかかることがあれば。さらに生まれ変わった僕を見てください」
野村「ちょ、待て。置いていきすぎやから。え、整形すんの?」
柴田「ごめんごめん。一応16時から」
野村「誰が時間聞いてんの。時間の話聞いてないやんけ。整形って、お前そんなコンプレックスあると思わなかった」
柴田「顔じゃない、背中背中」
野村「背中?」
柴田「そんなビックリしなくていいよ。プチだから」
野村「いや背中のプチ整形って聞いたことないよ」
柴田「羽つけるだけだから」
野村「何する気やねんお前おい! なんで背中に羽つけんねん。前代未聞やぞ、そんな奴。どうやってつけんねん」
柴田「いや、つけ方は、それは医者の領域だから…」
野村「よく見つけたなその医者。羽つけれますなんて聞いたことないぞ」
柴田「一応、羽田先生いわく…」
野村「羽田先生って言うの!? まぎらわしいな」
柴田「麻酔が切れて俺が目覚めたら、背中にはトンボの羽が…」
野村「なんでその羽やねん! 気持ち悪すぎるやろ! てっきり鳥の羽かと思ったわ」
柴田「鳥の羽はエロすぎるだろ」
野村「どこらへんが!? 鳥のことそんな目で見たことないから。いや、トンボってこんなもんやから。全然目立てへんで」
柴田「いやだからそれは、大きいさいずをウイングドットコムで勝ったから」
野村「なんのサイズやねん! これおまえおい! ウイングドットコムここで検索したろかおい。お前それ絶対騙されてんで」
柴田「騙されてるって、じゃあなんで昨日俺んちに八枚届いたのか」
野村「何枚いんねんそれ! なんで背中に八枚もつけようとしてんねん」
柴田「この際誤解を解く意味でも言うわ。実はそのうち二枚は…お前への誕生部プレゼントやったんや」
野村「マジでいらんわ! 羽のプレゼント誰が喜ぶねん、それお前!」
柴田「めったに手に入らないハエモデルやで」
野村「害虫やん! 害虫やんけおい。お前のやつよりキモいやん、それやったら。なんでそもそも俺にもつけさせうとしてんねん」
柴田「そしたらこうやって、なんでやねんて…」
野村「なんで羽でツっこまななあかんねん。めちゃめちゃダサいやんけ、羽で突っ込んでたらお前。いらんから。ほいで6枚くらい残ってんねやろ、羽。どうすんねん6枚でお前。まさか飛ぼうとしてるんちゃうやろな」
柴田「飛びたいんじゃなくて…(笑)」
野村「ああ」
柴田「モテたいんだよ」
野村「モテへんで! なんで羽つけたらモテると思ってんの、アホちゃう、お前。ほんならお前冷静に考えてみろよ。女の人が街でさ、でっかいトンボの羽つけてる男見てかっこええと思うか?」
柴田「それはそいつの羽ばたきこなし方次第だよ」
野村「いや着こなし方みたいにいうなよお前おい! どう着こなしゃ正解やねんお前おい! いやイメージ変えんねんやったら、髪の毛の色茶髪にしてみるとかあるやんけお前」
柴田「言ってなかったけど、茶パネやから」
野村「茶パネにしてどうすんねんおい! 見た目ゴキブリやんけ」
柴田「ありがとう」
野村「なんで喜ぶねん! なんでゴキブリ呼ばれて喜ぶねん。なんで顔を整形するっていう発想にいかへんねん」
柴田「親が悲しむだろ! それは!」
野村「羽のほうが悲しむやろそれ! 羽つけて帰ってきたらどんだけビックリすんねん」
柴田「どんな倫理観してんねん」
野村「いやお前が言うなよ! 顔を整形しなさいよ!」
柴田「わかったって! 顔を整形します、じゃあ」
野村「顔を整形するってのもな。羽に比べたらいいって言っただけで。整形することも顔のパーツいじるわけやから。それはあんまりやめたほうが…」
柴田「いやパーツはいじんないよ。羽つけるだけやから」
野村「つけんな言うてんねん! なんでどうしても羽をつけたいのお前」
柴田「ウサギの耳つけてる人もおるし」
野村「バニーガールやろ!」
柴田「俺はトンボーイやから」
野村「トンボーイてなんやねん! 無理やから!」
柴田「わかった。羽つけるのはあきらめる」
野村「諦めろ」
柴田「その代り虎のしっぽお尻につける」
野村「わかってへんやんけ。もうええわ」

よくできた台本。面白い。


だけど、そこに私は、あるものを見つけてしまった。


私じゃなくても、20代後半〜40代後半のお笑い好きなら、上の文字を読んだだけで見つけてしまうだろう。


1994年〜1996年頃に猛威を奮った魔の病気…


ダウンタウン


を。


あまりにダウンタウンさんに憧れるあまり、ダウンタウンさんのコピーになってしまう「ダウンタウン病」。その影響力はすさまじく、生まれたときから天才、一国一城の主のように見える、くりーむしちゅー有田さんや、アンタッチャブル山崎さんもかかってしまったほど。

その病は、松本師本人からの号令で伝染が止まった。

そして私がお笑いを始めようとして詰め込み勉強した1999年〜2000年には、芸人のみなさん、ダウンタウンリスペクトが入りながらも、直接的にダウンタウンさんの文法に触れないネタを創られていた。ちなみにその芸人さん達というのはおぎやはぎさん、アンジャッシュさん、ますだおかださん、ダイノジさん、田上よしえさん、ドランクドラゴンさん、長井秀和さん、ラーメンズさん等です。

そして2011年、1984年生まれの彼らから、まさかダウンタウン病を見ることになるとは。

笑撃戦隊の、特にこのDVDに収録されているネタはダウンタウンさんの漫才ではなく、コントもでもなく、フリートークをトレースして作られている。ただ、漫画界と違ってお笑い界は、パクりはご法度だが、トレースは一応認められている。ただそのトレースがあまりにも明らかだと、ダウンタウン病とみなされ、松本師に自ら怒られたり、M−1決勝に出られなかったりする。事実2004年以降はダウンタウンさんリスペクトが出すぎているコンビは早い段階で落とされている。2010年、両国で笑撃戦隊が大爆笑を取りながら決勝に進めなかったのも、間違いなくこれが原因だろう。

もはやPON!とかでレポーターをするほどの彼ら。もう売れてるからいいのかもしれないが、どこかで心の中のダウンタウンさんを殺すことをしないと、その先には進めないのかもしれない。