元売れない芸人の独り言

孤高のコーイチロー、波乗りコーイチロー、ヒキコモリオなどの芸名で売れない芸人をやっていました。

『東京ポッド許可局』論 後編

引き続き、書籍『東京ポッド許可局』についての感想を書きます。


「真っ赤なスポーツカー」論
→「真っ赤なスポーツカー」はベタだが、日常で実際に見るとシュールだという論(解釈違ってたらごめんなさい…)


マキタ氏「彼(バカ野坂氏)はボケの芸人だったんだけど、辞める理由が『パイロットになる』というのはベタだし、非常にボケの精度の低い言葉じゃない?(笑) でも、ベタを日常に持って帰るとシュールになるんだよ。この現象を『真っ赤なスポーツカー理論』と名付けたいんだけど」
タツオ氏「たとえば、バナナの皮で足を滑らせる、なんて比喩的にはよく使われるけど、バナナの皮で足を滑らせる人は実際にはいませんからね。今、目撃したら絶対シュールな光景だと思う。しかも、素でね」

ちょっと、論旨とは違うが、場所によってその人がシュールかベタかは変わる。NSCに入っていて、ベタベタな漫才をやっている人でも、地元の同窓会に出れば、芸人をやっているという変わったシュールな人だろう。ライブドアの中では私はベタな普通の営業だったが、外に出ると「ライブドアだ」ということでシュールな目で見られた。環境によって変わるんですよね。

「排泄映画」論
→笑いでなく、「泣き」について語っている章。マキタさんが「泣く」ことを「抜く」ことだと例えていた。

「おすそわけガム」論
→アメトークの「人見知り」芸人を、「ガムをくばれるかくばれないか」という、さらに具体的に、自然主義的に落とし込んだ話。そして、吉本の芸人とジャニーズのタレントはガムをくばれる側だと。ここからは私の考えですが、確かに吉本の芸人の前に出る勢いはすさまじい。芸人が全員出てくるエンディングトークなど、バスケのリバウンドのポジションの奪い合いのようだ。最下層のライブAGEAGEプロジェクトからそんな戦いがあるのだから、それを繰り返し、勝ち続けてきたフジモンさんとかブラマヨさんとか品川さんが強いのは決まっている。…では吉本ではないが、現在最強の攻撃力のあるザキヤマさんは…これは改めて書きます。

「手数」論
→これはあえて太字にしてしまいました。太字出ちゃいました。この「東京ポッド許可局」を次のステージにあげた名作。もちろん全回面白いですが、これがなければここまでリスナー数増えていたかどうか…。ミスチルで言う「クロスロード」、イエモンでいう「JAM」、ジュディマリでいう「OverDrive」、ドラゴンアッシュでいう「陽はまた昇り繰り返す」…この辺でやめますが、元々才能があった人たちが、さらに完璧な作品…というか、世間と擦りあう作品ができあがり「あのコは誰?」となった作品です。もっと言うと、この「手数」論だけで一冊にできるほど深い話です。なぜなら、M-1GP優勝者がこの理論をなぞり3組生まれているからです。…ではその手数論とは何かというと…

タツオ氏「基本的に手数を増やしていきましょう、というのが『M−1グランプリ』であり、『爆笑レッドカーペット』なんです」
マキタ氏「うんうん」
タツオ氏「で、僕は実際に計測したんですよ。90年代のダウンタウンが漫才で活躍した時代、ダウンタウンは相当衝撃的だったし、手数が多いと言われていました。『誘拐』というネタは本編が三分半なんですが、三分半のうち何回笑わせたかというと、15回なんです。単純計算すると、210秒÷15回、つまり14秒に一回の割合で笑わせたことになる。もっと前にさかのぼると、やすし・きよしとかツービートの時代はネタが八分も十分もあって、ネタの尺自体が今とは違うのですが、平均的な手数を割り出してみると、二十秒に一回ぐらいになる。すごく受けているところは受けているのだけど、スジフリが異様に長い。テレビの歴史として、ネタが十分の時代から、ダウンタウンの時代はだいたい五分ぐらいになって、『M−1』は決勝で四分強です。ダウンタウンからだいたい10年から15年経っているわけですが、じゃ、今のお笑いコンビが『M−1』の決勝でどれぐらいの手数を繰り出しているのか、全組を計測してみたんです。三分半から四分の間に何回笑わせているのか? すると平均で33回笑わせているんです」

一体ここまで「手数に注目し」「それを実際に計測し」「そして発表した」人はいたでしょうか? 芸人さんや作家さんでもしかしたら似たようなことはしたかもしれませんが、ここまで徹底して行い、そして発表した人はいないと思います。…それゆえに、あるライターさんが「笑いのネタをパクる」のではなく「笑いの『論』をパクる」という事件が起こってしまいました。こんなことも史上初だと記憶しています。今までも、手数…的なことについてレジェンド達が多少語ってはいます。



ビートたけしさん「その時代のあとに出てきたダウンタウンは(ツービートよりも)もっときめ細かい。おいらの二、四、六、八というネタの切り取り方が、一、二、三、四でとってきたという感じ。乗った時は、0.1とか0.2の刻みでとり出したという感じがある。スピード的には二、四、六と飛んでいくから、B&Bとかおいらの漫才のほうが早いんだけど、ダウンタウンは0.1をじっくりもたせちゃうというところがある。おいらの五分ネタを三十分くらいやれる細かさで、その感じをよくわからせたのがダウンタウンの漫才だ。それは進化だと思う」
『コマネチ!-ビートたけし全記録-』北野武新潮文庫



島田紳助さん「そもそものスタートから僕は、それまでの漫才師たちが堂々と築き上げてきた万人向けの笑いに背を向けていたのだ。その天下を取るための最大の武器が、洋七さんの機関銃のような速いテンポの喋りだった。今まで漫才というものに見向きもしなかった若い層に訴えるには、その16ビートのテンポがどうしても必要だったのだ。少し専門的に説明すると、喋りの『間』の数を減らして減らして、一人が喋る時間をできるだけ長くして、僕たちはあの速いテンポを作り上げていったのだ。そこに至るまでには、かなりの苦労もしたつもりだ。それだけに、漫才のテンポというものに対して、僕は人一倍敏感だったのかもしれない。ところが、ダウンタウンの漫才には、その速いテンポがなかったのだ。僕らのテンポを16ビートだとしたら、それ以前の8ビートよりも遅い、それこそ4ビートくらいに感じた」
『哲学』島田紳助 松本人志幻冬舎


漫才ブームで凌ぎを削った天才たちは、独自の「論」を持ち、漫才を築いていき、だからこそ異質なダウンタウンに気づきました。しかし、タツオさんほど「手数」を計測していたわけではなかったと思います。

…そして実は、俺もNON STYLEさんのM-1優勝時のネタを分析していました。

M-1GP2008優勝者NON STYLEのネタ分析

ネタは省きますが、結果は…

ネタ時間:3分47秒

そのうちに放ったボケの数:43個

43個のボケの内訳:

ダジャレ→1

ダジャレ+顔芸→1

顔芸→1

動き+シンプルなボケ→1

シンプルなボケ→12

ちょっとひねったボケ→4

メタコントボケ→1

すかしボケ→1

ブリッジボケ→14

相方いじり→1

かぶせ→2

たたみかけ→3

一本目のネタからの超時空かぶせ→1


…タツオさんの計測と一致したかはわかりませんが、ブリッジボケが大きかったという感想は同じです。



そして、この「手数論」が認められ、世に出たことにより、「あれ、この人たち他にも面白いことしてるんじゃないか?」という目で見られ、おそらくこの本の刊行にまで至ったのでしょう。人の評価はオセロゲームのようなもの。大量の黒石が置かれていっても、一個の勝利で、パタパタパタっと遡って評価される。民法の「取り消し」が「遡って無効にさせる」のと同じですね(?)。自分も「手数論」のようなヒット作を模索しつつ、遡られても恥ずかしくない面白いことを色々やっておこうと思いました。


ピン芸人素数」論
→R−1という競技の審査の難しさと、ピン芸人という種族について語られています。

「悪性エンターテインメント」論
→怪しい新興宗教にハマるような人たちは、虚実入り混じるプロレスという悪性エンターテイメントを見て、もっと心を鍛えなさいと。おっしゃる通りです。


…と、影響されて、「周辺」から「中心」を見て語ってしまいました。
万が一関係者の方がご覧になってたら、生意気言ってしまい大変失礼いたしましたm(--)m



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