元売れない芸人の独り言

孤高のコーイチロー、波乗りコーイチロー、ヒキコモリオなどの芸名で売れない芸人をやっていました。

青春の種明かし〜『子殺し』金澤克彦と『罪と音楽』小室哲哉〜

新日本の象徴・神であるアントニオ猪木に聞きたい。
 俺はこのリングで、プロレスやりたいんスよ!

蝶野正洋

世の中カッコつけてて
 それよりカッコよくなきゃいけない
 もし飛び出るんだったら

SWEET 19 BLUES/安室奈美恵

「TK」といえば高阪剛というのが定説になった昨今、
もはや髪を振り乱しながら、複数のキーボードを叩く男のことは忘れていました。

書店でその本を見つけたときも、
最初は立ち読みで済ませようと思っていました。

しかし…

読み出すと、止まらなくなり、つい購入。

理由の一つは、元祖TK、小室哲哉がガチのパンチを打ってきているのがわかったこと。
いや、実際に文章を書いているのはゴーストでしょうし、
ガチやるしかないくらい追い込まれているというのがあっても、
本当に伝えたいことを曝け出しているのがわかり、これは買ってもいいんじゃないかと。

例えばP69(以下引用)


 自分の中の扉を開け、音楽世界に閉じこもった。現実世界を生きるだけのゆとりがなかったのだろう。現実世界の中に安らぎを探す気持ちすら失せていた。
「飽きられるまで…」
「見向きもされなくなるまで…」
「時代遅れと言われるまで…」
 現実世界に戻り、ひとりでぼんやりしていると、そんな声があちこちから一斉に聞こえてくる。
「余計なことは考えなくていい。ただ続けろ。絶対に、止まるな」
 僕には、その声に従うほかに選択肢がない。
 それはもう、「生きながらにして死ぬ」ことを科された日々だった。

 もちろん、実際に誰かが僕を責め立てたわけではない。追い詰めているのは自分自身だ。
だから、いわば基本的人権を自ら手放したようなもの。
 フェラーリを何台も買った。
 バリ島に別荘も買った。
 ロスからニューヨークに行くのは、好きな時間に出発できるチャーター機だ。
 尋常ではない贅沢な生活だったのは事実である。しかし、そうでもしていないと、僕はシャボン玉みたいにパチンと弾けてしまっていたかもしれない。基本的人権すらない自分と贅沢三昧の自分、この両者で差し引きゼロのバランスを保っていたところもある。

〜中略〜

 4年連続でレコード大賞を受賞した。
 95年、trf「Overnight Sensation〜時代はあなたに委ねてる〜」
 96年、安室奈美恵「Don't wanna cry」。
 97年、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」
 98年、globe「wanna Be A Dreammaker」。

 しかし、そんな熱病の中で、ひどく冷めた自分もいた。
「こんな栄華が際限なく続くわけがない」
 盛者必衰。諸行無常。いつか波は去り、凪が来るのは摂理だ。それもまた誰にも止められやしない。
 
〜中略〜

 たとえ200万枚売れた曲があっても、その次の曲は、またゼロからだ。
 もはや限界を完全に超えてしまっていた。

完全な全盛期に、こんな悩んでいたとは知りませんでした。

と、言っても、全然知らない人の苦悩のカミングアウトで、わざわざ買いはしない。
私は…というか、私の世代は小室哲哉直撃世代なのです。

trfの「EZ DO DANCE」が発売されたのが、1993年、中学一年生のとき。
米米クラブチャゲ&アスカに慣れていた自分には衝撃だったし、
早朝のボーリング場に流れるセクシーなPVは、なんだかワルの雰囲気がして、
ちょっとカッコいいと思っていました。
そしてtrfはサムという隠し玉も使い全盛期を迎え、
安室奈美恵という天才、華原朋美というスターも現れました。
しかし、それらへの周りの狂熱と共に、私はだんだん冷めていきました。
「あれ? この人の曲、なんか同じじゃないか?」
「『小室が好き』っていう奴と、なんか気が合わない。浅い気がする」
その「同じ」とか「浅い」というのが実は計算だったのが、
この本を買ったもう一つの理由であり、テクニック、知識として吸収したいところでは
あるのですが、当時の私は、「反小室」みたいなところから自我を生んだ部分もありました。
Xのほうが深い世界観があるじゃないか、ミスチルのほうがなんかいいこと言ってるじゃないか、
ブルーハーツのほうが響くじゃないか…。
ただ、そういうのは周りの友達には黙っていました。


そんな小室哲哉が、中高生を騙すために使った魔法には私は乗らなかったのですが、
違う魔法には完全にかかっていました。

それがプロレスです。
プロレスはガチであることを疑わず、今の総合格闘技を見る目で楽しんでいたのですが、
それを壊したのが「橋本VS小川 第三戦」でした。
小川が橋本をボコボコにした三戦後、小川、そしてそれを操っていた猪木、佐山は
一斉に叩かれました。
しかし私にはクエスチョンでした。
確かに最強の橋本がやられたのはショックでしたが、別に小川は反則はしていない。
何が悪かったんだと。
そこで、プロレスは「プロレス」であり、それと違う「ガチ」があるということが
なんとなくわかりました。

それでも、続く四戦、「負けたら即引退」という言葉を創った五戦と、
謎の世界が続きました。
プロレスと、ガチ…総合格闘技でも、プロレスでもない、謎の空間、異世界が生まれました。
それを仕掛ける猪木も謎でした。
新日本の筆頭株主が新日本を壊すことにどういう意図があるのか…?

ZAKIさんから借りたこの本を読んで、ちょっとだけ謎がわかりました。
といっても、まだまだ謎がありますけどね。
この本自体が、「半ガチ」なところがあります。
「右肩を脱臼した橋本が、天龍に勝てるわけもなく、敗北」
とか、「プロレス真剣勝負説」に立ってますよね…?
まあ、詳しくは飲み屋で…。


腹を痛めた生んだわが子、
永田、新日本プロレス
橋本真也を殺した猪木の真意はなんだったのか…。

橋本小川の第四戦で猪木が傷ついた橋本を抱きしめたのは、
彼一流のプロレス(パフォーマンス)だったのか、
それとも心からのシュート(真剣)だったのか。

しかしそんなことがありながら、IGFを旗揚げして影響力がなくなり、
新日本が新しい面白さを出しているのがまたドラマティックですね。

そこで中邑真輔が猪木戦を要求しているのとか意味がわからないですね。

でも、だからプロレスは面白いですね。

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